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二百文字怪談 堀部未知・不破有紀

二百文字怪談 堀部未知・不破有紀



堀部未知「49」

200字


敵の上陸から49日。

母は洞窟(ガマ)の中で死んだばかりの私の髪を()(ほつ)に編みながら、何が怖いのかもう解らないと言った。

自ら足を切断して焼いた骨をザラメに綿あめを作ってくれた母。綿あめは雨雲のように甘露の雨を降らせてシュガーローフと彼らが呼ぶ安里の丘を濡らした。

仏さまになるのよ。

血抜きした私をブッダだと背負い、岬を目指す母を銃弾が貫き梵鐘を鳴らす。

玉砕の丘を下肢の列が進み、音もなく降りしきる魚卵、海に還る朝。



※不破有紀さんには、堀部未知「49」で使われている一単語を使用して執筆するという縛りのもと、200文字怪談をご執筆いただきました。不破さんが選んだ一単語は綿あめです。



不破有紀「ふわふわ」

216字


俺は綿あめの中に飛び込んだ。最新式の綿あめはべたつくことはない。常にふわふわして、ユーザーの不安を吸い取ってくれる。その素敵な寝心地はなぜか子宮を連想させた。今日も夢の中で羊がメェとなく。メェメェメェ。鳴き声の大合唱の中で誰かがぽつりとつぶやいた。「そろそろ起きた方がいいよ。手遅れになるよ」でも俺は聞こえないふりをして牧草を食む。現実の俺はまだ人間だろうか。そろそろ羊になった頃だろうか。電気羊となった俺は、今日も牧場の夢を見る。








先行公開日:2021.7.17 一般公開日:2021.8.28

カバーデザイン:浅野春美


堀部未知
400文字以下のショートショートを投稿できる小説投稿サイト「ショートショートガーデン(SSG)」にて活動している。「犬の果て」が「BOOK SHORTS」で2018年度3月期優秀作品に選出される。2020年にはベリーショートショートマガジン「ベリショーズ」vol.5と「ベリショーズ Light」に短編を寄稿。『ただ白くてほそ長い鳥』が小鳥書房の主催する第1回小鳥書房文学賞を受賞。太田靖久の企画編集するインディペンデント文芸ZINE『ODD ZINE』のvol.6に「入所から出所後、入社から退社方向で」を寄稿するなど、活動の幅を広げている。


不破有紀
2020年、長編小説『はじめてのゾンビ生活』が第1回令和小説大賞の最終候補に選出され、『Eat me』が第1回かぐやSFコンテストにて最終候補作品に選出された。2021年には、「So Eagerly Awaiting」(翻訳Kamei Toshiya)がNew World Writingに掲載されたのを皮切りに、Insignia Storiesの「Mythical Creatures of Asia」など英語圏の媒体にも作品を掲載している。またジャンルを横断した文芸コンテスト、第1回SHIBUYA的文芸コンテストにてSF小説『REC』が優秀賞を受賞。掌編から長編まで多彩に活動している書き手だ。

堀部未知

堀部未知

400文字以下のショートショートを投稿できる小説投稿サイト「ショートショートガーデン(SSG)」にて活動している。「犬の果て」が「BOOK SHORTS」で2018年度3月期優秀作品に選出される。2020年にはベリーショートショートマガジン「ベリショーズ」vol.5と「ベリショーズ Light」に短編を寄稿。『ただ白くてほそ長い鳥』が小鳥書房の主催する第1回小鳥書房文学賞を受賞。太田靖久の企画編集するインディペンデント文芸ZINE『ODD ZINE』のvol.6に「入所から出所後、入社から退社方向で」を寄稿するなど、活動の幅を広げている。