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ル々の花

ル々の花

「ル々の花」の縦書きバージョン
 
 
目(め)覚(ざ)めれば樹(じゅ)海(かい)のあおい苔(こけ)のなか
 
繋(つな)がってくらげの夢(ゆめ)の世界(せかい)へと
 
かみなりは雲(くも)から雲(くも)へ放(はな)たれて
 
ぐにゃぐにゃの虹(にじ)にぶつかり鳩(はと)落(お)ちる
 
どの蛸(たこ)もしあわせに腕(うで)食(く)っている
 
襞(ひだ)に襞(ひだ)合(あ)わさり蛇(へび)の立(た)ち昇(の)ぼる
 
猫(ねこ)げんき大(おお)きな猫(ねこ)の骨(ほね)のなか
 
霧(きり)立(た)てばすべてが影(かげ)で触(ふ)れられず
 
散(ち)り切(き)ればたちまち戻(もど)る万(まん)の菊(きく)
 
白(はく)鳥(ちょう)や湖(こ)底(てい)の黒(こく)鳥(ちょう)も飛(と)んで
 
しんしんと雪(ゆき)あつまって雲(くも)の道(みち)
 
滝(たき)凍(こお)る芯(しん)より滝(たき)の音(おと)怒(ど)涛(とう)
 
燕(つばめ)らの自(じ)我(が)入(い)れ替(か)わる口(くち)移(うつ)し
 
古(ふる)池(いけ)や蛙(かわず)飛(と)び込(こ)み影(かげ)動(うご)かず
 
空(くう)中(ちゅう)を止(と)まりつづくや花(はな)吹雪(ふぶき)
 
この薔(ば)薇(ら)が咲(さ)いて朽(く)ちきる薔(ば)薇(ら)の中(なか)
 
裏(うら)返(がえ)りつづけてくらげ裏(うら)返(がえ)り
 
産(う)む浜(はま)を探(さが)し続(つづ)けて骨(ほね)の亀(かめ)
 
透(とう)明(めい)な幹(みき)に夕(ゆ)焼(や)けの影(かげ)の水(みず)
 
火(ひ)の中(なか)を捻(ねじ)れて大(たい)蛾(が)噴(ふ)き上(あ)がる
 
実(ル)を剥(は)がれくるくる燃(も)ゆるル々(るる)の花(はな)
 
蛾(が)の翅(はね)に万(まん)の火(ひ)の粉(こ)や火(ひ)に火(ひ)花(ばな)
 
ル々(るる)の花(はな)吸(す)いきり鷲(わし)に聲(こえ)生(う)まれ
 
自(じ)我(が)はばたく鷲(わし)から私(わたくし)が剥(は)がれ
 
大(おお)いなる島(しま)を載(の)せゆく揚(あげ)羽(は)蝶(ちょう)

告知

本作は島アンソロジー『貝楼諸島へ/より』(犬と街灯)の収録作品です。

Kaguya Planetに掲載したの島アンソロジー参加作品

先行公開日:2021年11月27日 一般公開日:2021年12月25日
カバーデザイン:浅野春美

星野いのり

星野いのり著者

作家・俳人。現代俳句協会と俳句結社「炎環」に所属。2018年に俳句連作「自由帳」(田中大河名義)が第14回鬼貫青春俳句大賞を受賞。また、第二回全国俳誌協会新人賞にて正賞を受賞。2021年に俳句連作「あかねさす」が第4回俳句四季新人奨励賞を受賞。同作は『俳句四季』(2021年7月号) に収録されており、これをきっかけに『文藝春秋』(2021年8月号) にも俳句を寄稿している。第三回「ブンゲイファイトクラブ」本戦出場。BL俳句誌『庫内灯』、BL短歌合同誌『共有結晶』など多くの同人誌に寄稿している。また、YouTubeやFMラジオに出演したり、自作の解説をnoteに載せたりするなど、より多くの方に俳句を楽しんでもらうための活動をしている。